ソバ

ソバ、多くの美徳を持つ植物 

ソバの歴史

植物分類では、ソバはソバ属（Fagopyrum）として知られています。一般に信じられていることに反して、ソバ（blé noir）はその名前にもかかわらず、小麦（blé）とは無関係です。むしろ、ソバは穀物ではなく、タデ科の植物です。

紀元前数千年前、ソバは、中国西部の四川省で栽培されていました。京都大学の農業遺伝学の専門家である大西近江教授の研究により、ソバが最初に出現したのは统一（Tongyi）川流域であり、現在もそこで自生していることが判明しています。食用作物として、中国では7000年前から栽培されてきました。

フランスの考古学者は、13世紀に遡る化石化したソバ花粉の痕跡を発見しましたが、ソバが実際にフランスの農業に導入されたのは15世紀末になってからでした。その後ソバは、16世紀を通じて徐々に西フランスの食事に広がりました。17世紀から第二次世界大戦（1940年）にかけて、ソバはアルモリカン山塊の人々（ブルトン人とノルマン人）の主要作物および食料となったほど広がりました。

ブルターニュの作付パターンが実際に変わり始めたのは、20世紀前半でした。ソバの作付面積は少しずつ減少し、家畜の飼料となる植物（および機械除草）が好まれるようになりました。同様に、穀物作付面積の増加もソバ栽培の減少に影響を及ぼしました。1950年代以降、ソバの作付面積は、ブルターニュ地方のすべての県で約1億平方メートルを下回り、20世紀を通じて減少し続けました。比較として、19世紀には、イル＝エ＝ヴィレーヌ県（département Ille-et-Vilaine）のソバの作付面積は、約11億平方メートルを超えていました。

最後に、1990年代初頭になって、「ブレノワールの伝統ブルターニュ（Blé Noir Tradition Bretagne）」PGI（地理的表示保護）の登場により、ソバ栽培がアルモリカで再開されました。現在、ブルターニュ全土のソバ栽培面積は、約4000万平方メートルから約5000万平方メートルと推定されています。

また、ソバは中央アジア、ネパール、シベリアでも栽培されています。ソバの最大の生産国と消費国はロシア（50%）、中国（28%）、ウクライナ（5.5%）です。これらの国々ではソバが主食で、お粥（オートミールなども含む）、麺類、その他の料理の形で消費されています。

ソバのライフサイクル

ソバのライフサイクルは非常に早く（70～90日)、5月に播種され、通常は9月または10月に収穫されます。苗は播種後3～5日で現れ、葉は3〜6週間で現れ、6〜7週間後に開花します。最後に、種子は10～12週間後に成熟します。

ソバは一年草の顕花植物で、高さが1メートルにもなります。

また、ソバは開花期間が長い植物（50日間）で、成長期間中ずっと花を咲かせます。種子の熟度に細心の注意を払うことが重要です。ソバは成長が早く、成長に肥料を必要とせず、病気や害虫も寄せ付けない植物です。

7～8月に、白やピンクの小さな花が咲きます。

これらの花蜜は養蜂家の間で非常に人気があります。ソバの栽培には、優れた感性と経験から得たノウハウ、そしてソバの成長を注意深く観察することが必要です。当植物の茎は水分が豊富でもろいため、鋤（すき）で引いたり踏みつけたりしてはいけません。

収穫はコンバインハーベスター（農業機械）を使って行います。収穫は、9月から10月下旬まで行われます。

収穫は、穀物の4分の3が熟し（段階的に熟す）、茎が赤くなり、上部の葉が失われたとき（穀物の水分が25%）に開始できます。

ソバの花は、すべてが同時に開花するわけではないため、開花がすべて完了する前に収穫を行う必要があります。

そばとその農業、環境、栄養上の利点

「私たちが食糧、健康、農業、生物多様性に関する重大な問題に直面している今、ソバはその答えの一部です」この植物は、

その貴重な性質により、多くの解決策を提供し、自然を尊重するより健康的な生き方に対する私の取り組みの中心となっています。キッチンではその豊かな風味が明らかになります」

Bertrand Larcher

ソバは、農学、栄養、環境の観点から、現代の優先事項に完全に応える、環境に優しい高潔な植物です。

何千年もの間、最も貧弱な土壌さえも強化してきた植物であり、栽培も簡単です。 

また、手間がほとんどかからない植物です。ソバは窒素をあまり必要とせず、化学肥料、農薬、除草剤も必要ありません。さらにソバは、輪作で天然の除草剤として使用することもできます。 

しかし、ソバの栽培には、特に気象条件などの課題があります。ソバは、乾燥または熱帯気候では生育しません。暑さや干ばつ、または肥沃すぎたり密度が高すぎる土壌を好みません。アフリカ大陸では南アフリカにのみ生育し、南米では主に、南部の温帯地域で見られます。ソバは涼しい温度を好み、夏には雨が必要な植物です。 

Breizh Caféファームでは、アグロフォレストリー、つまり、リンゴの木や生垣といった樹木（当社の場合、約3000本）を農業システムの中心に据えるという方法でソバを栽培しています。これは、ソバと木を同じ敷地内で栽培するというアイデアです。アグロフォレストリーは農家に多くの利益をもたらし、作物の多様化、生物多様性のための生息地、微気候（非常に狭い、あるいは限定された地域の気候）、炭素貯蔵といった、アグロエコロジーの発展の手段として認識されています。Breizh Caféファームは、2021年に8トン、2022年に10トン、2023年に15トンのソバを生産しました。

ソバは双子葉植物であり、その種子は穀物と同じように消費されます。ソバは穀物とは異なり草ではないため、「疑似穀物」とみなされます。ソバの実は生で食べたり、トーストしたり、ローストしたりするだけでなく、挽いて粉にすることもできます。ソバの実と粉は、さまざまな点で人間の健康に有益です。それらはグルテンを含まず、高品質のタンパク質を含み、繊維と複合炭水化物が豊富です。

ソバの栄養上の利点について結論として、Agrocampus OuestおよびINSERMの生化学・人間栄養研究所所長であるLegrand教授は次のように説明しています。「ソバには幅広い栄養上の利点があります。特に、ソバには高品質のタンパク質が豊富に含まれており、穀物には不足しがちな必須アミノ酸（リジンを含む）の優れた供給源です。ソバの炭水化物含有量は血糖値に与える影響が非常に穏やかで、繊維の優れた供給源です。最後に、ソバは興味深い抗酸化物質の供給源です」。

Champ de Sarrasin Ferme Breizh Café © Damien Lemennais